なづログ

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意外と詳しく知らない「みなし労働」「みなし残業」とは?

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どうも、こんばんは。

中小企業で人事の仕事をしているなづです。いつもブログを見てくださりありがとうございます。

今日は求人票などでよく見かける「みなし残業」について解説したいと思います。

うちの社員から、みなし残業って営業職の残業代(営業手当)のこと?というように聞かれることが多く、なんとなく営業職の残業といった認識でいる方も多いのではないでしょうか。


結論から述べますと、いわるゆ「みなし」と呼ばれることには「みなし労働時間制」と「みなし残業手当(固定残業)」の2つの意味があります。

それでは、この2点について簡潔に解説していきます。

みなし労働時間制(事業場外のみなし労働時間制)とは?

正式には「事業場外のみなし労働時間制」と言い、労働基準法に定められた労働時間の捉え方のことを差します。

ちょっと難しいことばですが、法律条文はこのようになっています。

労働基準法 第三十八条の二 労働者が労働時間の全部又は一部について事業場外で業務に従事した場合において、労働時間を算定し難いときは、所定労働時間労働したものとみなす。ただし、当該業務を遂行するためには通常所定労働時間を超えて労働することが必要となる場合においては、当該業務に関しては、厚生労働省令で定めるところにより、当該業務の遂行に通常必要とされる時間労働したものとみなす。


要点をあげると、このように考えられます。

①全部又は一部について事業場外で業務に従事した
  →外出業務(直行直帰、外出業務、外回り営業など)

②労働時間を算定し難いとき
   →何時間何分働いたか計算することが難しいとき

③所定労働時間労働したものとみなす
  →定時(例えば8時間)働いたことにする


一つ例をあげて平たく解釈すると、直行直帰が主体の外回り業務(外回り営業)の場合、移動時間や労働時間、空き時間が混在して、具体的な労働時間がわからないので、定時(例えば、休憩を除いて9時から18時まで8時間)働いたことにする。
実際に働いた時間が7時間だったとしても、9時間だったとしても、8時間と「みなす」ということになります。


シンプルに解説するとそれだけです。これをみなし労働時間制と言います。


もう少し詳しく知りたい方は具体例も参考にしてください。

労働時間を算定し難いときとは?

みなし労働時間制のトラブル(実際にはみなし労働時間制と言えないため、未払い残業代の請求を起こすケース)は、労働時間の算定が難しかったか否かが論点になります。

以下のような場合は労働時間が算定し難いとは言えません。
・外出中に数回、業務の進捗を報告し、指示を受けている場合
スマホGPSなどで位置を時間を記録されている
・どれだけ効率よくこなしても、一般的に考えて所定労働時間(例えば8時間)ではこなせない業務量

その他のみなし労働時間制

専門業務型裁量労働時間制

業務の性質上、業務遂行の手段や方法、時間配分等を大幅に労働者にゆだねる必要がある場合、この制度が適用されている場合があります。

例えば、新商品の開発などがあげられます。研究や開発で12時間経過を観察しなければならなかったりというように、やり方と時間配分を労働者に委ねる必要があり、上司が指示できない場合などが該当します。

企画業務型裁量労働時間制

事業運営に関する企画、立案、調査、分析等の業務の場合、この制度が適用されている場合があります。

例えば、経営企画などのお仕事があげられます。企画業務は結果的に正しかったか間違ったかを判断することはできますが、企画段階でその判断をすることはできません。やり方と時間配分を労働者に委ね、上司が指示をしない場合などが該当します。

みなし残業(みなし残業手当、固定残業手当など)とは?

「みなし残業」という言葉は、とくに法律で定められた言葉ではありません。

みなし残業とは月給に含まれている固定の残業代(〇時間分)のことを差します。


求人票に「月給に〇〇時間分の残業手当〇〇円分含む」と記載されている場合はこのみなし残業に該当します。
みなし残業手当固定残業手当と言われることもよくあります。


例えば、月給に10時間分の残業手当20,000円含む、と記載されている場合は10時間までは残業をしても残業手当は支給されません。10時間を超えた分は法律上、会社は支給する必要があります。

みなし残業(固定残業手当)のメリット・デメリット

みなし残業は考え方次第でメリットとデメリットが存在します。

企業側のメリット

・求人票の月給を残業込みで底上げできる
・残業代や賞与の基礎となる基本給を抑えても、月給を高く見せることができる
・仕事が遅い人と早い人の給料の逆転現象を解消できる

企業側のデメリット

・計算対象の残業時間の管理が煩雑になる
・みなし=ブラック というイメージを持っている方がいる

労働者側のメリット

・残業せずに帰っても固定残業手当分は確保されている
・速く仕事を終わらせると時間的なインセンティブを得られる

労働者側のデメリット

・上司に残業を支持された場合、固定残業手当分の時間は断れない
・残業代や賞与の基礎となる基本給が抑えられている場合がある

まとめ

いかがでしたでしょうか。

みなしについては、「事業場外のみなし労働時間制=外回り営業」「みなし残業=〇時間分の残業手当」と覚えておけば十分です。

近年、労働時間に対する対価(給料)という考えではなく、成果に対する対価(給料)に考え方が変わりつつあります。残業上限を見直す働き方改革ではなく、これこそが働き方改革だと思うので、ぜひそのような日本に変わってもらいたいと思っています。