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自己都合退職と会社都合退職では大きく違う失業手当のキホン

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どうもこんにちは、中小企業で人事の仕事をしているなづです。

失業手当(雇用保険の基本手当)を受給するとき、自己都合退職と会社都合退職では、失業手当の日数と総額に大きな差が出ます。
できれば退職を検討すると同時に、もしくは退職が既に決まっている場合は、自分がどのぐらいの失業手当を受け取れるか確認し、失業中の生計の計画を立てておきましょう。


この記事では、失業手当のキホンとして以下の3点をまとめています。

  1. 失業手当が貰える人と貰えない人の判断
  2. 受給できる金額と期間
  3. 受給までの流れ

 
 

失業手当を貰える人・貰えない人

失業手当を貰うためには以下の要件を満たしている必要があります。
・離職の日以前2年間に、雇用保険の被保険者期間が通算して12か月以上あること。
・就職しようとする積極的な意思と能力があること
・失業の状態であること(働く意志や能力があるにも関わらず、就職できない状態のこと)

当然の話ではありますが、失業手当は働いている人から集めた保険料から支払われます。なので保険料を払っていなければ貰えません。給与明細に雇用保険料が引かれているはずなので確認しておきましょう。


失業保険を貰えないケース

・週20時間未満のパート
・請負契約や個人事業主
・会社役員
前職がこのようなケースはそもそも雇用保険に加入できません。

一般離職者・特定理由離職者・特定受給資格者の違いとは

失業手当は退職理由によって受け取れる日数が異なります。退職理由は以下の3つに大きく分けられます。

一般の離職者とは(主に自己都合退職)

一言でいえば自己都合で離職した方をさします。つまり何らかの理由により自ら退職を申し出た者。
やってみたい仕事があったり、知人や親に新しい会社に誘われたというような前向きな離職理由もあれば、人間関係や社風が合わないといった後ろ向きな理由もあります。
後ろ向きな理由の中でも、特定の理由に当てはまれば以下の特定理由離職者に該当します。

特定理由離職者とは(やむを得ない理由での自己都合退職)

会社都合ではないものの、正当な理由(それなりに働くことが困難な理由)があり、自ら退職を申し出た場合
特定理由とは以下のような理由が当てはまります。
・事務所移転により通勤時間が伸びて通うことが大変になった
・体力的に仕事を続けることが難しくなった など

特定受給資格者とは(主に会社都合退職)

解雇や会社都合、またパワハラ長時間労働など、主に会社都合や会社に起因する理由での退職を指します。

特定受給資格者と特定理由離職者の要件

www.hellowork.mhlw.go.jp
特定受給資格者と特定理由離職者の詳細はハローワークのHPに細かく記載されていますので、リンクからご確認いただければと思います。

自分どの離職者に該当するか判断が難しい場合があります。例えば、パワハラがあったかどうか会社側と退職者側の意見が食い違っていることなど。このような場合もハローワークに書類を提出した際に職業安定所長が総合的に勘案して判断することになっています。

受給日数と給付日額(基本手当日額)

失業して雇用保険の失業手当を受給することになれば、いつからどれだけの期間にいくら失業保険の手当てが貰えるのかきになりますよね。もちろんそれによって次に転職する場合は計画を立てることになるかと思います。

失業保険は原則的に失業していた日数に応じて

   失業していた日数×基本手当日額

で計算されます。

基本手当日額について

入院保険であれば入院1日5,000円と同じように、失業1日につき支給される額のことです。
上限はありますが、失業期間が長くなればなるほど貰える額も多くなります。

基本手当日額の計算式

基本手当日額は、前職の退職日の直近6か月の給料を180で割った額(賃金日額)によって決まります。

例えば月給30万円(通勤手当、残業手当、各種手当含む)であった場合は

 300,000円×6÷180=10,000円(賃金日額)

但し、この賃金日額が貰えるわけではありません。

この賃金日額10,000円に0.45~0.8を掛けた額が、失業中に毎日貰える基本手当日額になります。

keisan.casio.jp

基本手当日額の下限と上限

基本手当日額には下限と上限があります。失業手当は失業中の生活保障が目的ですので、極端な話、月給300万円だからといって一日当たり10万円もらえるわけではありません。その逆で一日100円貰っても意味がありませんので、下限と上限が定められています。
年齢によって給与水準が異なりますので、基本手当の上限額も45歳~60歳が一番高くなっています。

離職時の年齢 基本手当日額の下限 基本手当日額の上限
29 歳以下 2,000円 6,815
30~44 歳 2,000円 7,570
45~59 歳 2,000円 8,335
60~64 歳 2,000円 7,150

一般離職者の給付日数

被保険者であった期間 10年未満 10年以上20年未満 20年以上
65歳未満 90日 120日 150日

※年齢は離職時の満年齢

特定理由離職者・特定受給資格者の給付日数

被保険者であった期間 1年未満 1年以上 5年未満 5年以上 10年未満 10年以上 20年未満 20年以上
30歳未満 90日 90日 120日 180日
30歳以上35歳未満 120日 180日 210日 240日
35歳以上45歳未満 150日 180日 240日 270日
45歳以上60歳未満 180日 240日 270日 330日
60歳以上65歳未満 150日 180日 210日 240日

※年齢は離職時の満年齢

モデルケース

30歳 月給30万円 勤続年数8年
 基本手当日額5,954円×最長90日 =535,860円

40歳 月給40万円 勤続年数15年
 基本手当日額6,666円×最長120日 =799,920円

受給開始まで

受給まで期間は以下の順番で進みます。

▽退職
▽会社がハローワークへ離職証明書を提出する
▽会社から離職票を受け取る
▽受け取った離職票ハローワークへ提出する
▽待機(7日間)
▽給付制限期間(3か月間)※一般離職者のみ
▽失業の認定
▽失業手当の受給(90日分~最長330日分)

失業手当を早く受け取るポイントは、1つめの退職日から4つめの離職票ハローワークに提出する期間までに時間をかけないことです。
会社がハローワークに離職証明書を提出し、ハローワーク離職票を交付して、会社経由で離職者に届けられます。
どうしても郵送などで時間がかかってしまうので、離職票を受け取ったらすぐにハローワークに提出しましょう。
離職票が届く目安は1週間~10日ほどです。

さいごに

今回は以上です。まずは失業保険受給の要件を満たしているか、そして離職理由によって、どの離職者に該当するのか、しっかりと確認しましょう。